部分入れ歯と総入れ歯
後期高齢者(75歳以上)になると、残っている歯の平均本数は13本程になってしまうことは以前「歯の喪失の実態」で紹介しました。
ブリッジや部分入れ歯、総入れ歯を使っている人の割合は後期高齢者では90%近くにも上るのです。
今回は部分入れ歯や総入れ歯などの代表的な入れ歯についてお話ししましょう。
部分入れ歯
歯を多く失ってしまうと、歯を土台として噛み合わせを作るブリッジができなくなるため、歯肉に床(しょう)という支えを求めます。
さらに歯が残っている場合は、歯にもクラスプという金属のバネを掛けて維持を求めます。
基本的な構造は保険の入れ歯も自費の入れ歯も同じですが、保険では使うことのできる材料・材質に制約があります。
保険の部分義歯
人工の歯とそれを支えるプラスチックの床、歯に掛かるクラスプ(バネ)からなります。
床の部分はプラスチックのみですので強度を保つためにある程度の大きさや厚みが必要になります。
個人差もありますが、なかなか馴染みにくいのもこのためです。
自費の部分義歯
・ノンクラスプ義歯
奥歯が無くなった場合、歯に掛かるクラスプ(バネ)は前歯に掛かることになります。
口を開けたときや笑ったときに金属部分が見えてしまうことがあります。
ノンクラスプ義歯とはその名の通り金属のバネがない特殊な入れ歯です。
床に特殊な弾力性のあるプラスチックを使用しています。
このため床の部分とクラスプに相当する部分を一体化して作ることができます。
金属部分が無いため入れ歯であることが気付きにくくなります。
このため、おしゃれ入れ歯ともいいます。
・マグネット(磁石)アタッチメント義歯
支えとなる歯にマグネット(磁石)を埋め込み磁力を利用して支える義歯です。
神経の無い治療の済んだ歯にしか利用できませんが、残っている歯の状況によっては負担も少ないので、良好な維持が得られます。
・金属床部分入れ歯
床の一部をチタンやコバルトクロムなどの金属で補うことで、薄くなる・形を小さくできるなど入れ歯の機能を最大限に引き出すことができます。
プラスチックの床のみに比べ違和感が少なくなり、装着感に優れています。
総入れ歯
保険の総入れ歯
床はプラスチックでできています。
プラスチックなので強度を出すためには分厚くなってしまいます。
違和感が出やすいのはこのためです。
厚さのため食べ物の温度は伝わりづらくなります。
自費の総入れ歯
・マグネット(磁石)アタッチメント義歯
支えとなる歯が残っていないとできませんが、マグネット(磁石)を覆って総入れ歯形態になる場合に応用できます。
・金属床総入れ歯
部分入れ歯と同様に床の一部をチタンやコバルトクロムなどの金属を利用することで、薄く違和感の少ない入れ歯にできます。
また食べ物の冷たい・熱いなどの温度が伝わりやすいため味覚にも良い影響があります。
チタンは軽くて丈夫なため、プラスチックに比べて装着感は格段に良くなります。
メンテナンスは忘れずに
自分に本当にあった入れ歯を作るのはそう簡単なことではありません。
皆さんのお口の中は一つとして同じ状態はありません。
入れ歯はそれぞれのお口にあわせ、一つ一つオーダーメイドで作られるのです。
これを保険で作ることができる日本は本当に幸せな国だと思います。
しかし残念ながらお口の中は少しずつ形状が変わってきます。
一度作れば何十年も同じものを使えるというわけではありません。
入れ歯で何か不快や不都合を感じたら無理に我慢はしないで下さい。
歯科医院に相談し調整してもらいましょう。
また調整が困難であれば新しく作り変えてもらいましょう。
合わない入れ歯を無理に使っていると、残っている歯や歯肉を痛める
毎日きちんとお手入れをし、定期的に歯科医院で診てもらうことが大切です。